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ヤフーの1on1とシリコンバレー式1on1の本を読んだ ~1on1の目的、進め方、何を話すべきか~
1on1 をチームで実施することとなり、勉強がてら『シリコンバレー式 最強の育て方 ― 人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング』と『ヤフーの1on1 ― 部下を成長させるコミュニケーションの技法』の2冊を読んだ。
※以下、それぞれをシリコンバレー式1on1本とYahoo 1on1本と表記する
両本のちがい
- シリコンバレー式1on1本
- 1on1の必要性、1on1で何を話すべきかが体系的にまとまっている
- 1on1の質問・伝え方例一覧が巻末にある
- Yahoo 1on1本
- 1on1における上司のロールとしてはコーチング的な要素強い
- 1on1での改善事例、サクセスストーリーが漫画・会話形式多く書かれている
- コミュニケーションの細かなテクニック・Tipsも多く書かれている
シリコンバレー式1on1本のほうで体系的に1on1の必要性・話すべきことを掴んで、実際に1on1の開催イメージを掴んでいくためにYahoo 1on1本を読むと良い。
1on1とは何か?
1on1とは上司と部下で行われる1対1で話をする場のことである1。日本語で言うと面談…だが面談というと人事面談や評価面談などのように堅い印象があるので、あえて1on1という呼び方をすることが多い。
1on1の目的
1on1 の目的としては下記が挙げられる。
- 部下との関係性の構築
- 業務ではできない質の高いコミュニケーションを行う
- 部下のキャリア開発
- 部下の短期的キャリア・中長期のキャリア開発を支援
- 部下のパフォーマンス管理
- 目標管理
- 部下のモチベーション向上
- 困っていること・業務ブロッカーの排除
- 部下の成長支援
- フィードバック
そして上司はこれらの1on1目的をきちんと部下に説明すること。部下が1on1に意義が見いだせなかったり、イヤイヤ開催するような1on1であれば1on1はすぐに形骸化してしまうので、しっかり上司は目的を伝えて納得してもらった上で1on1を開催すること。
1on1で話すこと
シリコンバレー式1on1本より図を引用
- プライベート相互理解
- 雑談の中から聞きだせるとよい。関係性を構築する上で相手の人となりは知っておくのが基本。
- 心身の健康チェック
- 心身の状態が問題ないか。業務量が過多になっていたり、業務時間が不規則になっていないか。
- モチベーションアップ
- モチベーションを下げる要因を取り除く
- 何か困っていること・業務を行う上でのブロッカーがあるのであればその話をきちんと聞く(傾聴/アクティブリスニング)
- 上司は部下への否定ではなく共感を示す
- モチベーションを上げる要因を作り出す
- ほめる/承認する
- モチベーションを下げる要因を取り除く
- 業務・組織課題の改善
- 業務課題の改善
- 課題を聞くとともに将来起こりうるリスクも確認しておくと良い
- チーム/組織課題の改善
- 業務課題の改善
- 目標設定・評価
- マネージャーは正しい評価をするのではなく、部下が納得できる評価が必要
- 納得感を持てなければ部下が建設的に目標に向き合えない
- マネージャーは正しい評価をするのではなく、部下が納得できる評価が必要
- 能力開発・キャリア支援
- 経験学習のサイクルを回す
- 戦略・方針の伝達
- 経営陣などの上層部の戦略・方針をその背景も含めて適切に部下に伝達する
1on1は部下のための時間
1on1は会社のための時間でもなく上司のための時間ではなく 部下のための時間 だ。
1on1で話すトピックは基本的には上司が決めてファシリテートしていくものであるが、部下が話したいトピックがある場合はそちらを優先する。
1on1内で話している時間も7-8割くらいが部下が話す時間になるようにするのが理想的である。
1on1メモを作ろう
1on1で話した内容を忘れないように、きちんと話したことをメモとして書き残しておく。
メモを残すならば今ならグーグルDocsなどのクラウドサービスを使うのが良いだろう。上司・部下だけが閲覧できるような設定にしておき、メモは共同編集しておけるようにしておくと良い。
上司は共有用のドキュメントとは別に部下の個人データを残すドキュメントも用意しておくとよい。そうすることで話が進めやすくなったり担当が変わったときの情報の引き継ぎがやりやすくなる。
心理的安全性の確保
1on1は部下が率直に、気兼ねなく上司と話をできる場でなければならない。言い換えると上司は部下の心理的安全性を確保するように気をつけなければならない。
心理的安全性とは、自分の言動が他者に与える影響を強く意識することなく感じたままの想いを素直に伝えることのできる環境や雰囲気のことです。
心理的安全性を確保するにはどうすればよいか。
まず、上司は部下一人ひとりときちんと向き合い話を傾聴する姿勢が求められる。部下の話を先取ったり途中で遮ることはやめること。
また、上司は部下の話を頭ごなしに否定するのではなく共感を示す必要がある。否定する必要があるときはニュートラルな上手な言い回しをすること。
そして目標設定・評価や業務アサインはきちんと部下が納得感を持てるような説明が上司に求められる。上司から部下への一方的な設定は命令感が強くなり部下が発言しにくくなる可能性がある。
1on1の頻度について
Yahoo社の場合だと週一回、30分の1on1ミーティングを実施しているとのことだ。フィードバックループを素早く回していくためにはそれくらいの頻度が丁度良いらしい。
とはいえ現実問題としてマネージャーは忙しいのでなかなかそこまでの時間がとれないかもしれない。であれば隔週、最低でも月一回は1on1を実施する。1on1 において重要なのは定期的に継続して実践することだ。
次のアクションを決める
1on1の中でタスクや確認事項が生じた場合はきちんと 次のアクション(宿題) として残しておく。
そのアクションがきちんと達成できているかは、次回の1on1時に必ず確認する。積み残した宿題があるのであれば出来なかった理由をしっかり確認して次回のアクションに繋げる。
1on1を通して成長を支援する
シリコンバレー式1on1本より図を引用
どちらの本も1on1での成長を促すために 経験学習サイクル を回すことが推奨されている。
1on1ではこのサイクルが上手に回るようにサポートする。上司は1on1のやり取りの中で上図の2(振り返り),3(教訓・学びの気づき),4(計画)を部下の口から引き出せるようにうまく働きかけをおこなう。
Yahoo 1on1本より図を引用
所感
業務上のコミュニケーションだけでは、業務外の困っていることであったりその人がキャリアプランをどう考えているかなどのトピックまでは拾えない。人々のワークスタイル・ライフスタイルの多様化にともない人々の仕事に対する価値観、仕事に求めることも多様化してきている中、その領域を拾える1on1は職場環境を改善するために非常に有効な手段だと感じることができた。
1on1制度はシリコンバレーは当たり前のプラクティスとなっていると聞く。日本企業でも1on1制度の導入事例が増えていって社会全体の労働環境が改善されると良いなーと思った。
1on1導入後も単純に1on1を開催して満足というわけではなく、上手な1on1にしていくには上司側の1on1スキルの向上も必要となってくる。本書を読んでその辺の細かなテクニックとか言い回しのポイントなども知ることができてよかった。
Web上の参考資料
- 生産性を高める 1on1
- 効果的な 1on1 ミーティングのためにマネージャができること – Taka Umada – Medium
- 1on1 で 何を話すのか? マネージャ/ソフトウェアエンジニアの立場から - サンフランシスコではたらくソフトウェアエンジニア - Higepon’s blog
上司と部下という呼称は上下関係が色濃く現れる日本語なのであまり好きではないのだが、便宜上使うこととする ↩